小説 鋼牙
03/10/18日にメルマガで配信したものです。
「おーい、鋼牙大丈夫か?」銀太が鋼牙を覗き込む.鋼牙はゲッソリとした顔で「よかねーよ.
だいたい菖蒲(あやめ)の奴がうるせーから…」最近北の山の長老(菖蒲のじぃちゃん)の使いの者と菖蒲がやってきて…『鋼牙!いいかげん所帯をもたない頭なんて面目ないでしょ!!』と言ってくるのだ.それも毎日。
「いいかげん嫌気がさしているぜ」深いため息がでてくる。
「だいたいおれはかごめに惚れているのに他の女なんか嫁にする気なんかさらさらないんだ!」ガサッ!「…でもかごめには好きな人がいるじゃないか!」と、背後からいきなり菖蒲が来ていた目に涙をためて…
菖蒲は涙をためた目で、「かごめは犬夜叉が好きなんでしょ」「あんな犬っころに負けるはずがねぇ、」「私は鋼牙が好きなのに…どうしてわかってくれないの!?」と更に涙が溢れる、鋼牙は途方にくれる、いつのまにか銀太と白角はどこかに行っていた雨がパラパラと降ってきた「鋼牙!」「なっ!?」菖蒲は鋼牙に抱きついてた、「離れろ菖蒲!」「本当に覚えてないの?」「…」「あの虹のこと、約束のこと!」「知らねえ」本当は思い出している。でも…「鋼牙!!」菖蒲は必死に見つめている。
「知らねえ、覚えてねえ」フイと目をそらさずにはいられなかった。
菖蒲は離れない。
「菖蒲…離れるんだ」「…」菖蒲は手を背中から離すと手を延ばして「あや…!?」鋼牙の唇に自分の唇を重ねた。
鋼牙は菖蒲を突き飛ばした。
「…ごめん」顔を真っ赤にして菖蒲は走りさっていった。
鋼牙はただ呆然と立ち尽くした、そしてすぐにかごめを思い出す。
菖蒲は嫌いじゃない、だがおれかごめが好きなんだ…ふいにかごめに逢いたくなる。
そう思い始めたら、いつのまにか走っていた。かごめの匂いを探して… 犬夜叉一行は雨が降ってきたので木の下で休んでいた。
かごめは傘をさしながら七宝と遊んでいる、すると少し遠くのほうで薄く虹が出来ているのが見えた
「見て犬夜叉、虹が淡くて綺麗よ」七宝を抱きよせながらかごめが嬉しそうに言う「そんなことより、いつまでここで休んとくんだよ」「そんなことって…!」「まぁまぁ犬夜叉、雨が上がりきるまでは休んでおきましょう」と弥勒が微笑みながら言う「もう!虹が綺麗なのにデリカシーが無いわね」とかごめがいじけながら…「七宝ちゃんもっとよく虹が見える所に行ってみない?」「あぁ?もうそろそろ出発すんだからまってろよ」「大丈夫よちゃんと戻ってくるから」にっこりと笑いながらかごめは七宝を抱いて森の中に入って行った…
虹が淡く空を描いていたころ、鋼牙もまた虹を見ていた。
最初は走っていたが、そんなつごうよくかごめがいるはずはないと気付いたから「虹か…なんであんな約束しちまったんだろう」と自己嫌悪していたとき、かごめの匂いがした。
雨の匂いでわかりにくいがかすかに匂う。鋼牙は無我夢中で走った かごめは森のなかで虹が良く見える場所を探して迷っていた。
すると七宝は嬉しそうに「かごむ!あっちなら良く見えるんじゃなかろうか?」と走る。
「ちょっと七宝ちゃん!?」七宝を見失ったかごめは迷子になってしまった…《犬夜叉》と心の中でつぶやいて「かごめ!」「えっ!?」かごめがビックリして振り返る。
鋼牙は全速力で走ったので妙に息切れしてしまう。
かごめが鋼牙を覗き込んで「鋼牙くんどうしたの?」「一人なのか?」「え…さっきまでは七宝ちゃんといたんだけどはぐれちゃって、でもすぐ犬夜叉が来ると思うから大丈夫。」
ほほ笑みながら言うかごめを見て「犬っころが…」鋼牙は嫉妬の炎が沸き上がったどうしておれじゃなく犬っころじゃなきゃあいけないんだ…「本当どうしたの鋼牙くん?具合悪いの!?」手を出しておでこの熱を計ろうとする…鋼牙はその手を握ると自分の腕の中にかごめを捕まえる…どうしても欲しい…
「ちょっと鋼牙くん!?離して!!!」ハッと我に帰った鋼牙はかごめを離す。
かごめはほのかに顔が赤らんでいる。二人の間に気まずい雰囲気が流れる「悪い…」「…」その一言が精一杯だった。
「かごめー!もう虹がきえてしまうぞ〜」七宝が戻ってきてかごめを呼ぶ、「すぐ行くわ七宝ちゃん。
それじゃ鋼牙くん」かごめは鋼牙を見ずにいう、「…あぁ」ポツンと一人残り、ずっとかごめの後姿を見ていた…。
虹は…もう見えなかった、かわりに空には太陽の光がさし、青々と美しかった。
おそらく鋼牙はこれからもずっと片思いをするだろう、そして菖蒲も…